ある日、年金を受給している方のもとに、
「令和9年分 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に関する案内が届くことがあります。
「扶養親族等申告書?」
「自分には扶養家族はいないけど、提出しないといけないの?」
「年金から税金が引かれるということ?」
「そもそも、これは何のための書類?」
このように戸惑う方も少なくないのではないでしょうか。
しかも、令和9年分(2027年分)は制度が変更され、これまでよりも幅広い年金受給者が申告書の案内を受けるようになっています。
この記事では、令和9年分の「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」について、
- これは何のための書類なのか
- なぜ自分に届いたのか
- 必ず提出しなければならないのか
- 扶養家族がいなくても関係するのか
- 令和8年分までと何が変わったのか
- 今、自分は何をすればよいのか
を、できるだけ分かりやすく整理します。
※この記事は、制度を理解するための一般的な情報提供を目的としています。個々の税額や控除の適用について判断するものではありません。具体的な判断が必要な場合は、日本年金機構、税務署またはお住まいの市区町村などに確認してください。
- まず結論。「届いたから、必ず提出」ではありません
- そもそも「扶養親族等申告書」とは?
- なぜ令和9年分は、今までと違うの?
- 令和9年分は、どのくらいの年金額から案内が届く?
- 「申告書が届く基準」と「所得税がかかる基準」は違う
- では、届いたら何をすればいい?
- 扶養家族がいなくても提出することがある
- 逆に、提出しなくてもよいケースもある
- 配偶者がいる場合は要注意
- 「年金収入」と「所得」を混同しない
- 令和9年分から「19歳~22歳」の親族にも新しいポイント
- 紙で提出する方法と、電子申請
- 「ねんきんネット」を利用している人は電子申請が便利
- では、今あなたがやるべきこと
- 迷ったら、無理に自己判断しない
- 「申告書が届いた=税金を払わなければならない」ではない
- まとめ:まず「自分に控除があるか」を確認しましょう
- 編集後記
まず結論。「届いたから、必ず提出」ではありません
最初に結論です。
日本年金機構から「扶養親族等申告書」の案内が届いたとしても、
「届いた人は全員、必ず提出しなければならない」というわけではありません。
この申告書は、年金から源泉徴収される所得税や、住民税について、配偶者控除・扶養控除・障害者控除などの各種控除を受けるために提出するものです。
そのため、まず確認したいのは、
「自分は、この申告書によって受ける控除があるのか?」ということです。
そもそも「扶養親族等申告書」とは?
簡単に言えば、
年金にかかる税金を計算するときに、配偶者や扶養親族、本人の障害者控除などを反映してもらうための申告書 です。
たとえば、
- 配偶者がいる
- 子どもや親などを扶養している
- 本人が障害者に該当する
- 寡婦・ひとり親に該当する
といった場合には、一定の条件を満たせば控除を受けることができます。
その控除を年金からの源泉徴収や住民税の計算に反映させるために、この申告書を提出します。
なぜ令和9年分は、今までと違うの?
ここが今回の大きなポイントです。
令和8年度税制改正により、令和9年分から扶養親族等申告書の提出対象が拡大されました。
これまでは主として、「年金から所得税を源泉徴収される人」が対象でした。
ところが令和9年分からは、
住民税について配偶者控除などの各種控除を受ける場合も、この申告書の対象となりました。
そのため、「所得税がかかるほど年金をもらっていないのに、なぜ申告書が届いたの?」というケースが出てきます。
これは制度変更によるものです。
令和9年分は、どのくらいの年金額から案内が届く?
日本年金機構によると、令和9年分の扶養親族等申告書の送付対象となる年金額は、次のようになっています。
| 年齢 | 令和9年分の送付対象となる年金額 |
|---|---|
| 65歳未満 | 98万円以上 |
| 65歳以上 | 148万円以上 |
ここで注意したいのは、「この金額以上なら所得税が必ずかかる」という意味ではないことです。
あくまで、「扶養親族等申告書の案内が届く可能性がある年金額」ということです。
「申告書が届く基準」と「所得税がかかる基準」は違う
ここは非常に間違えやすいところです。
例えば65歳以上の場合、令和9年分では、148万円以上の年金を受給している人が送付対象となります。
しかし、令和9年分について所得税の源泉徴収対象となる年金額は、それより高い水準です。
つまり、148万円以上だから所得税が必ず天引きされるということではありません。
令和9年分では、住民税の関係で申告書の対象範囲が広がったためです。日本年金機構も、65歳以上では148万円から214万円の範囲について、住民税のみの課税対象となり得る人が新たに対象となることを説明しています。
では、届いたら何をすればいい?
まず、次の順番で確認してみましょう。
STEP 1 自分の年金の種類を確認する
この申告書の対象となるのは、基本的に、老齢または退職を支給事由とする年金を受給している方です。
障害年金や遺族年金などは、今回の「老齢年金にかかる源泉徴収」の話とは別になります。
STEP 2 自分が控除の対象になるか確認する
次に確認するのは、「自分には申告する控除があるか?」です。
代表的なものとして、
- 配偶者
- 扶養親族
- 障害者
- 寡婦
- ひとり親
などがあります。
扶養家族がいなくても提出することがある
「扶養親族等」という名前なので、「扶養している家族がいなければ関係ない」と思ってしまいがちです。
しかし、そうとは限りません。
例えば、本人が障害者に該当するという場合には、本人についての障害者控除が関係します。
また、寡婦やひとり親に該当する場合もあります。
したがって、
「扶養家族がいない=必ず提出不要」ではありません。
逆に、提出しなくてもよいケースもある
日本年金機構によれば、受給者本人が障害者・寡婦等に該当せず、控除対象となる配偶者または親族等もいないという場合には、申告書を提出する必要はありません。
つまり、
例
- 65歳以上
- 老齢年金を受給
- 配偶者なし
- 扶養している親族なし
- 障害者等にも該当しない
という場合には、申告書が届いたとしても、
「何を申告するの?」という状態になることがあります。
このような場合は、無理に「扶養親族」を探して記入する必要はありません。
配偶者がいる場合は要注意
一方、配偶者がいる場合は少し複雑になります。
配偶者がいるからといって、自動的に配偶者控除が受けられるわけではありません。
配偶者自身の所得など、いくつかの条件があります。
令和9年分について、日本年金機構は「源泉控除対象配偶者」の所得要件を、原則として
合計所得95万円以下としています。
ここで注意したいのが、「収入」と「所得」は違うということです。
例えば配偶者が年金を受給している場合、
年金収入
↓
公的年金等控除
↓
年金所得
という計算になります。
そのため、「妻の年金が○万円だから扶養から外れる」と、年金額だけを見て判断することはできません。
「年金収入」と「所得」を混同しない
税金の話で最も混乱しやすいのが、収入と所得の違いです。
例えば、
「年間100万円の年金を受け取っている」という情報だけでは、税法上の「所得」が100万円という意味ではありません。
年金には「公的年金等控除」があるためです。
さらに、
- 年齢
- 年金の種類
- 給与など他の収入
- その他の所得
などによっても計算が変わります。
したがって、扶養親族等申告書を正確に判断するには、
「年金はいくらもらっているか」だけでなく、「所得はいくらになるのか」を見る必要があります。
令和9年分から「19歳~22歳」の親族にも新しいポイント
令和9年分では、19歳から22歳の親族についても注意が必要です。
日本年金機構によると、令和9年分では、
- 一般の扶養親族等:所得62万円以下
- 19歳~22歳:所得85万円以下
という区分があります。
また、令和9年分では「特定親族」という区分も設けられています。
若い子どもや孫などを扶養している場合は、以前の制度だけを前提に判断しない方がよいでしょう。
紙で提出する方法と、電子申請
令和9年分の扶養親族等申告書は、スマートフォンやパソコンから電子申請することもできます。
マイナポータルとねんきんネットを連携している場合、電子申請によって手続きを行うことができます。
電子申請で提出した場合、
紙の申告書を提出する必要はありません。
また、翌年以降はマイナポータルのお知らせで案内され、紙の申告書が送付されない仕組みも用意されています。
「ねんきんネット」を利用している人は電子申請が便利
すでにマイナポータルとねんきんネットを連携している人なら、スマートフォンやパソコンから手続きできます。
日本年金機構は、扶養親族等申告書について、
- 24時間いつでも手続き可能
- 自宅から手続き可能
- 郵送不要
といった電子申請のメリットを案内しています。
「紙の書類を書くのが苦手」という方には便利な方法です。
では、今あなたがやるべきこと
ここまでを、実際の行動に置き換えてみましょう。
① まず、届いた案内を確認する
「令和9年分 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に関する案内か確認します。
② 自分の年齢と年金額を確認する
令和9年分では、
- 65歳未満 → 98万円以上
- 65歳以上 → 148万円以上
が送付対象の目安です。
③ 配偶者・扶養親族の有無を確認する
次に、
- 配偶者がいるか
- 子どもを扶養しているか
- 親などを扶養しているか
を確認します。
④ 本人の控除も確認する
さらに、
- 障害者
- 寡婦
- ひとり親
などに該当しないか確認します。
⑤ 「収入」ではなく「所得」を確認する
配偶者や扶養親族がいる場合は、
その人の年間収入はいくらか?
だけでなく、
税法上の所得はいくらになるのか?
を確認します。
ここが一番判断の難しいところです。
迷ったら、無理に自己判断しない
年金の税金は、
- 年齢
- 年金額
- 配偶者の年齢
- 配偶者の所得
- 扶養親族の所得
- 障害者等への該当
- その他の所得
- 住んでいる市区町村
などによって変わります。
特に令和9年分は制度変更が入っています。
そのため、「ネットで見た○○万円という数字だけで判断する」のはおすすめしません。
日本年金機構では、令和9年分の扶養親族等申告書について相談チャットや問い合わせ窓口を案内しています。
「申告書が届いた=税金を払わなければならない」ではない
これも覚えておきたいポイントです。
申告書が届いたからといって、「税金が確定した」ということではありません。
今回の申告書は、年金にかかる税金を計算する際に、一定の控除を反映させるための手続きです。
また、令和9年分からは住民税の控除に関係するため、所得税だけでは説明できない人にも案内が届くようになっています。
まとめ:まず「自分に控除があるか」を確認しましょう
令和9年分の「扶養親族等申告書」が届いたら、慌てる必要はありません。
まず、
- 自分の年齢を確認
- 年金額を確認
- 配偶者がいるか確認
- 扶養している親族がいるか確認
- 本人が障害者・寡婦・ひとり親などに該当しないか確認
- 配偶者・親族については「収入」ではなく「所得」を確認
- 控除を受ける必要があるなら申告書を提出
- 判断できなければ日本年金機構などに相談
という順番で考えると分かりやすいでしょう。
令和9年分は、これまでと少し違います
今回の制度変更で特に覚えておきたいのは、
令和9年分から、所得税だけでなく住民税の関係でも扶養親族等申告書を提出する仕組みになった
ということです。
そのため、
「去年までは届かなかったのに、今年は届いた」
という方がいても不思議ではありません。
公式情報はこちら
このような税金・年金に関する情報は、制度変更によって内容が変わる可能性があります。
最終的な判断をするときは、必ず最新の公式情報も確認しましょう。
- [日本年金機構:令和9年分「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の紙の提出方法]
- [日本年金機構:令和9年分 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書]
- [日本年金機構:個人の方の電子申請(扶養親族等申告書)]
この記事について
この記事では、2026年10月時点で公開されている日本年金機構等の情報をもとに、令和9年分の扶養親族等申告書について一般的な制度を解説しています。
個々の方の税額、控除の適用可否、申告書の具体的な記載内容について判断するものではありません。
実際の手続きでは、ご自身に届いた申告書や日本年金機構の最新案内をご確認ください。
編集後記
税金の仕組み、もう少しシンプルになりませんか?

今回、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」について調べてみて、改めて感じたことがあります。
それは、日本の税制は、どうしてここまでわかりにくいのだろう? ということです。
年金を受け取って生活している人にとって、税金は決して他人事ではありません。
それなのに、書類が届けば「自分は提出しなければならないのか?」と悩み、所得の基準を調べれば「収入と所得は違います」と説明され、さらに所得税と住民税では扱いが異なることもあります。
制度を正しく理解しようとするだけで、なかなかの労力が必要です。
もちろん、税金の仕組みが複雑になる事情はあるのでしょう。所得や家族構成、障害の有無など、それぞれの事情を考慮しようとすれば、制度がある程度複雑になるのも理解できます。
しかし、それにしても、です。
制度を利用する側が、制度を理解するために多大な労力を費やさなければならない状況は、果たして望ましいのでしょうか。
今回の申告書についても、一定の条件に該当する人に控除を適用するという目的自体は理解できます。しかし、そのために毎年のように書類を送り、受給者自身に制度を調べてもらい、提出の要否を判断してもらう必要が本当にあるのか。疑問が残ります。
一定の所得以下であれば、原則として税負担が生じないようにする。控除の適用についても、行政が保有する情報を適切に活用し、可能な限り自動的に処理する。本人による申告が必要なのは、追加の確認が必要な場合や、情報に変更があった場合に限る。
そんな仕組みを、もっと真剣に検討してもよいのではないでしょうか。
そして、もう一つ気になることがあります。
それは、政府や行政に対する信頼の問題です。
税制が複雑であればあるほど、「自分は本当に正しく扱われているのだろうか」「知らないうちに損をしているのではないか」「なぜ、こんな手続きを自分でしなければならないのか」といった疑問や不満が生まれやすくなります。
もちろん、制度が複雑だからといって、直ちに政府への不信につながるわけではありません。しかし、説明がわかりにくく、手続きの負担が大きく、しかも制度変更の理由が十分に伝わらなければ、不信感が積み重なっていくことは十分に考えられます。
本来、税金や社会保障の制度は、国民の生活を支えるためにあるはずです。
それなのに、制度を理解し、手続きを済ませること自体が負担になってしまう。これでは、何のための制度なのかと考えてしまいます。
もちろん、公平性を確保するためには、一定のルールや確認手続きが必要です。すべてを単純化すればよい、という話でもないでしょう。
それでも、制度を複雑にすることと、公平性を確保することは、本当に同じなのでしょうか。
行政の都合で複雑になった仕組みを、国民の努力だけで補い続けるのは、そろそろ見直してもよいのではないか。
今回の申告書について調べながら、そんなことを考えました。
税金の制度は、専門家だけが理解できればよいものではありません。
普通に働き、年金を受け取り、日々の生活を送っている人が、自分に何が必要なのかを無理なく理解できる。そんな制度であってほしいと思います。

