「近代資本主義」は衰退に向かっている。と、ある学者はいいます。
そもそも「近代資本主義」とは?
…このような見方は,フランスの歴史家F.ブローデルの〈経済世界〉という概念や,第三世界史におけるA.G.フランクやS.アミンら〈従属〉派(従属論)の発想が前提になっている。すべての国や地域が,大きなタイム・ラグを含みつつ,いずれは封建社会から近代資本主義社会へ移行していく,とする単一の発展段階論を前提とする一国史観とは逆に,大航海時代以後の世界は,銀などの貨幣素材,砂糖,茶,ゴム,石油などの換金作物・製品などの大規模な分業システムとして成立している。システムの内部は,自由な賃金労働を主体とする〈中核〉地域と,歴史的にいえば何らかの〈強制〉労働が中心となった〈周辺〉,およびその中間としての〈半周辺〉などに機能分化している。…
コトバンク > 近代資本主義
ん~、いまの経済システムにどっぷり浸かって生きてる我々一般庶民には、なかなか理解しづらい文言です。💦
その記事によれば、このように説明されています。
近代資本主義は事実上、1492年に始まった。クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸に流れ着いた年である。コロンブスだけでなく、金(カネ)を稼ごうと、多くの西欧の冒険家が世界へ渡っていった。いわゆる大航海時代の始まりだ。近代資本主義とは、移動、拡大、膨張の時代のことである。
出典:四季報ONLINE > 市場動向 > 「資本主義は静かに衰退を始めている」と断言できるワケ
かなり解りやすくなりました。
その後の西欧諸国が行ってきた政策に言い換えると、近代資本主義は、「植民地政策」によってもたらされたものということがよくわかります。
つまり、1492年以降は、植民地という外部が生まれたことにより、外部からの富の流入が経済の拡大をもたらし、それによって所得も増えるので、売れる商品を作り始めた、と。
その「近代資本主義」は衰退に向かっているそうです。
本記事は、「衰退する近代資本主義」について、わかりやすく解説します。
近代資本主義を動かしたもの
中世までの循環経済
閉じられた経済圏では、技術革新があっても品質が改良されるだけであるため、その改良された分を以前より対価として多く支払うことはできません。
更に、所得は変わっていませんから、そのサービスに支払う金額は以前から変わりません。したがって、経済的には価値は以前から何も変わりませんし、経済は拡大しないことになります。
これが、中世までの繰り返し「循環経済」と呼ばれます。
「ぜいたく」の始まり
1492年以降は、外部(植民地)が生まれたことで、富の流入が始まり経済の拡大を招いたということは冒頭で説明したとおりです。
そして、17世紀以降さらに経済を動かしたものが「ぜいたく」の始まりです。ここからが、近代資本主義の本格的な始まりだと。
それまでは、妻や恋人は人目につかないように隠していたが、彼女たちを着飾らせて、躍らせて、みなに見せびらかす、ということが始まったのである。ヴェルサイユ宮殿は、ルイ14世が妾のラ・ヴァリエールのために造り、そこは豪華絢爛に飾り付けられ、パーティが行われたと言われる。「国王に負けじ」とそのほかの貴族たちも妻や妾を着飾らせ、パーティで見せびらかした。女たちも、影の存在から一躍主役として舞台に踊り出た。ぜいたくは無限に膨らんだ。
出典:四季報ONLINE > 市場動向 > 「資本主義は静かに衰退を始めている」と断言できるワケ
これら2つの要因で、近代資本主義が動き出したのです。
19世紀半ばまでは限定的だった富の流入
ここで疑問がわきます。
産業革命は18世紀に始まっているにもかかわらず、かつ数多くの技術革新が起きたのに、なぜ本格的な人口増加は起きなかったのか?
ぜいたく品の生産は増え、富裕層の消費は増大していきました。しかし、経済全体で見ればその量は限られています。
だから人口は増えなかった、と。
これが19世紀後半に一変します。19世紀前半に多くの必需品に関するものが発明されました。電信、電気、そして電話です。蒸気機関は内燃機関となり、動力として使われるようになりました。
一段と時間の節約が進んだ20世紀
家事労働革命
20世紀になると家事労働革命が起きます。
ざっとあげるだけでもこんなにあります。
- 上下水道によって、家庭に水が届いて廃棄も行われる
- 洗濯機によって、洗濯に要した時間がほかの仕事ができるようになる
- 掃除機によって、掃除に要した時間がほかの仕事ができるようになる
- 冷蔵庫によって、買い物に要した時間がほかの仕事ができるようになる
- ミシンによって、裁縫に要した時間が大幅に削減されほかの仕事ができるようになる
- などなど、、
このように、衣食住の効率が大幅に向上し、庶民の時間も余るようになりました。その余った時間が労働投入時間の増加となり、生産力は加速度的に向上していくことになったのです。
自動車の普及
自動車の普及で移動時間が減り、馬のための施設や土地、汚物処理が要らなくなり、それによって土地が余り、時間も余り、労働力は増えて生産力が向上しました。
庶民を含む社会全体の人々の生活水準が上昇します。これによって経済の急成長が始まり、この頃から人口増加も顕著になります。これが、19世紀後半からの第1の経済成長です。
第2の成長とは?
第1の経済成長により、庶民は家事労働などから解放され、農作業の時間が増加し、賃金を得ることのできる外での労働時間も増加し、所得が増加していきました。
そして、庶民の時間が余った。
ここで余暇というものが生まれました。娯楽、レジャーの誕生です!
庶民までがぜいたく品を消費するようになったということです。
これがアメリカの20世紀の成長であり、日本の高度成長です。
「新しい」という価値
「ぜいたく品」に対して「必需品」はどうだったか?
これが、現在の第3の経済成長段階といえます。次から次へと新製品が生み出され、「新しい」ということが価値そのものとなったのです。
そして現在
最終段階を迎えているといえます。なぜなら、人々は「新しい」こと自体に価値を見いだせなくなってしまいました。つまり、「新しい」ものに飽きたのです。
新しいものを消費することの繰り返しに飽きてしまったのです。
売り手はどうしたか?
「ぜいたく品」を「必需品」に仕立て上げ、すべての人々に永続的に消費させるようにしているのです。やめられない「ぜいたく品」として。
それは、テレビであり、ゲームであり、スマホであり、SNSであると。
すべてがエンターテインメントであり、つまりは「暇つぶし」であると。
低成長なのにインフレが起きている理由
コロナ禍やウクライナ紛争の影響も大きいですが、必需品の経済合理性が低いことも要因です。
つまり、「ぜいたく品」にかまけたことで、必需品の生産が手薄になり必需品を提供する労働力も不足しています。必需品は儲からないから生産者は増加しません。したがって、食料、資源などの価格高騰が起きているのです。
国内の格差が拡大している理由
富裕層は必需品が多少高騰しても特に問題ありませんが、貧困層は生活に苦しむことになり実質的な格差が拡大することになります。また、投資は開発投資に向かわず、ほとんど金融市場に向かうため、富裕層は益々資産を増大させることになります。
まとめ
どうやら、「衰退する近代資本主義」の本質的な問題は、かなり根深いようです。💦
「サステナブル」とか「SDGs」などの流行り言葉が出てきた背景にも関係していると考えて間違いないでしょう。
米国の利上げ打ち止め宣言はまだ先になりそうですし、金融不安も暫くは収まる気配がありません。
今まさに大転換期にあるのだと思います。
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