3年前から始まったコロナ禍、中国による爆買い、異常気象、とどめはウクライナ紛争。
これらによって、小麦をはじめとする穀物価格、原油価格、化学肥料の原料価格などの高騰が止まりません。
詩人の高村光太郎は、「食うものだけは自給したい。これなくして真の独立はない」と言い、キューバの革命家ホセ・マルティも、「食料を自給できない人たちは奴隷である」と言ってます。
いまのニッポンの状況はどうでしょうか?
先日、熊本県人吉市で開催された講演会(低すぎる食料自給率と安全保障の危機)に、講師として登壇された鈴木宣弘教授も警鐘を鳴らされています。
本記事は、ニッポンのこのような危機的状況について、わかりやすく解説します。
安全保障の崩壊
今のニッポンは、安全保障が崩壊している状態といいます。
なぜなら、食料問題がその本質を示している。と専門家が警鐘を鳴らします。
- 米国の余剰農産物の最終処分場
- 米国などの危ない食料の最終処分場
- 特定企業の利益のための市場原理主義の洗脳政策
- 自動車の利益のために農と食を差し出す「生贄」政策
- 目先の歳出削減しか見えない財政政策
どういうことでしょうか?それぞれ見ていきましょう。
米国の余剰農産物の最終処分場
1993年UR(ウルグアイ・ラウンド)合意の「関税化」と併せて、輸入量が消費量の3%に達していない国(カナダも米国もEUも乳製品)は、消費量の3%をミニマム・アクセスとして設定されています。
欧米にとって乳製品は外国には依存できないものなので、無理してそれを満たそうとする国はありません。
かたやニッポンは、既に消費量の3%を遥かに超える輸入があったので、その輸入量を13.7万トン(生乳換算)のカレント・アクセスとして設定し、毎年忠実に満たし続けています。
ということは、超優等生ですね💦
北海道内の生産者団体は、今年度の生乳の生産量の目標を2年連続で抑制し、今年度当初の目標と比べて3%あまり引き下げることを決めました。
毎年、生乳換算で13.7万トンのバター・脱脂粉乳等を輸入する「カレント・アクセス」が定められている一方で、今年度当初に設定した415万9000トンと比べると14万トン、率にしておよそ3.4%引き下げられることになったということです。
こうしたかたちで乳製品の輸入を行う一方、牛乳余りが生じたら、「在庫が増えたから牛乳を搾るな、牛を殺せ」と言うのはあまりにも無責任だと思いませんか?
しかも、ついに強制的減産で搾ったが出荷できない生乳を酪農家が廃棄する事態まで生じています。
コメも同じです。
日本は本来義務ではないのに毎年77万トンの枠を必ず消化して輸入しています。
米国との密約で「日本は必ず枠を満たすこと、かつ、コメ36万は米国から買うこと」を命令されているのです。
米国などの危ない食料の最終処分場
ホルモン牛肉は日本向け
「ホルモン・フリー」はEUと自国(米国)向け、「ホルモン牛肉は日本向け」ということを知っていますか?
EUでは米国産を禁輸し、豪州産牛肉を食べるから豪州産だったら安全では?
答えはNOです。
オーストラリアは使い分けていて、成長ホルモン使用肉を禁輸しているEUに対しては投与せず、輸入がザルになっている日本(国内生産には使用を認可していない)向けにはエストロゲンをしっかり投与しているそうです。
出典: 鈴木宣弘(東京大学大学院教授)「低すぎる食料自給率と安全保障の危機」
- 「アメリカでは牛肉に『オーガニック』とか『ホルモン・フリー』と表示したものが売られていて、経済的に余裕のある人たちはそれを選んで買うのがもはや常識になっています。自分や家族が病気になっては大変ですからね。」(ニューヨークで暮らす日本人商社マンの話)
- 米国も、米国国内やEU向けはホルモン・フリー化が進み、日本が選択的に「ホルモン」牛肉の仕向け先となりつつある。
ジャガイモも危ない?
最近の米国産ジャガイモをめぐる動きは以下のとおりです。
- ポテトチップ加工用生鮮ジャガイモの通年輸入解禁
- 生食用ジャガイモの全面輸入解禁に向けた協議開始
- 動物実験で発がん性や神経毒性が指摘されている農薬(殺菌剤)を、生鮮ジャガイモの防カビ剤として食品添加物に分類変更
- その残留基準値を0.2ppmから4ppmへと20倍に緩和
- 遺伝子組み換えジャガイモの4種類を立て続けの認可(外食には表示がないのでGMジャガイモかどうか消費者は判別できない)
- 日米貿易協定に基づく冷凍フライドポテトの関税撤廃
米国にとって至れり尽くせりの状況💦
特定企業の利益のための市場原理主義の洗脳政策
戦後、パン食に加え、肉食も米国が進めたものです。
出典: 西原誠司(鹿児島国際大学教授)「穀物メジャーの蓄積戦略と米国の食糧戦略」
- 小麦の対日工作の主役、小麦のキッシンジャー・リチャードバウム(米国西部小麦連合会) が厚生省「日本食生活協会」に資金供与してキッチンカーを走らせ、農林省「全国食生活改善協会」を通じた日本の大手製パン業界の育成、文部省「全国学校給食連合会」に資金供与。
- 日本の肉食化キャンペーンの仕掛人・クレランスパームビー(米国飼料穀物協会)が「日本飼料協会」発足させ、テレビ広告、東京都「肉まつり」、米国穀物依存の日本畜産推進。→とうもろこし処分
- 日本の食生活洋風化は米国の余剰穀物処理戦略。
自動車の利益のために農と食を差し出す「生贄」政策
貿易自由化の犠牲とされ続けている日本の農業
食料は国民の命を守る安全保障の要(かなめ)なのに、日本には、そのための国家戦略が欠如しており、自動車などの輸出を伸ばすために、農業を犠牲にするという短絡的な政策が採られてきました。
農業を過保護だと国民に刷り込み、農業政策の議論をしようとすると、「農業保護はやめろ」という議論に矮小化して批判されてきました。
農業を生贄にする展開を進めやすくするには、農業は過保護に守られて弱くなったのだから、規制改革や貿易自由化というショック療法が必要だ、という印象を国民に刷り込むのが都合がよい。この取組みは長年メディアを総動員して続けられ、残念ながら成功してしまっている。しかし、実態は、日本農業は世界的にも最も保護されていない。
出典: 鈴木宣弘(東京大学大学院教授)「低すぎる食料自給率と安全保障の危機」
命を守り国土を守っている産業を国民みんなで支えるのは欧米では常識
これらが常識となっていない日本が非常識なのです。
目先の歳出削減しか見えない財政政策
国産振興こそが不可欠なことは誰の目にも明らかなのに、政府はコメをつくるなと言うだけでなく、その代わりに小麦、大豆、野菜、そば、エサ米、牧草などを作る支援として支出していた交付金をカットすると決めました。
推進すべきときに何故なの?潰す気満々に見えますね~💦
まとめ
冒頭に書いたように、詩人の高村光太郎は、「食うものだけは自給したい。これなくして真の独立はない」と言い、キューバの革命家ホセ・マルティは、「食料を自給できない人たちは奴隷である」と言いました。
2020年度の食料自給率が37.17%(カロリーベース)、種や肥料も考慮した実質的自給率は更に低い10%あるかないかとみられる日本は独立国と言えるでしょうか?
安全保障上、「食」が非常に重要であることはご理解頂けたと思いますが、もっと厄介なのは医療費の問題です。食と医療費は密接に繋がっています。詳しくは以下の記事で説明していますのでご参考に!
これらの闇について国内大手メディアはほとんど報道しません。
その理由が理解できれば本質が見えてきます。
『闇の根っこにあるもの』を知りたい方はこちらもどうぞ。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます!